Sさんのこと <その2>

 「PC俳句会」への投句は二年ぐらい続けた。だが次第に投句作品が互選から漏れるようになった。推敲すればするほど感情移入が強くなり、互選から外れる道理が当時は分からなかった。また重鎮たちの選評をよく読むと、どうやら句作には骨法らしきものがあることに漸く気が付いた。何回目かのオフラインミーテングでSさんに、このことを話すと良い結社があると、俳句結社Eを紹介してくれた。

 あとで判ったことであるが、Sさんは名古屋にある加藤かけいが主宰していた「環礁」に属し、当時すでに同人であった。在京のSさんは句会の度に名古屋に通うのが大変なので結社Eにも入会し吟行や句会を楽しんでいたようである。その後、Sさんとは結社Eの句会で数回一緒になった。ある日、Sさんから「他の会員には内密に」と分厚い封筒を渡された。帰宅して開けてみると『山椒魚の謎』と『山椒魚の故郷』というSさんの著書が二冊入っていた。その後まもなくSさんは、句会に姿を見せなくなった。私も結社Eの居心地の良さもあり、Sさんのことは気になりながらも次第に忘れていった。

 話は変わるが、私は四年前の夏、突如身体に変調を来し一週間ほど入院したことがある。その際、カテーテルという手術に近い検査を行うため家族が呼ばれた。その際、医師から突然死してもおかしくない症状だったと告げられた。私はそれまでの経験から「死」への免疫性は人より強いと思っていた。幼児期には昨日まで遊んでいた幼馴染の急死があり、少年期には父を始め一緒に生活をしていた身内の死をいくつか経験していたからだ。また、あまり自慢することではないが、自分自身も数回身体にメスを入れてきた。その都度不安はあったが不思議と「俺は死なない」という自信めいたものが常にあった。

 しかし今回は少々応えた。たぶん歳のせいだろう。このことが契機となり、それまで余り考えなかった「死」というものを、少し真剣に考えるようになった。「死」を考えるといっても、世間でいう終活(終末活動)のことではない。どういう気持ちで死んでゆけばよいか、という自分の心の持ちようのことである。気取った言い方をすれば「死生観」の問題になるかと思う。

 ということで、私はその手の本を少しずつ読み始めた。読み始めて気が付いたことがある。それは本が以下の二種類に分けられることだ。つまり⓵人は突然「死」に直面した場合、どのような行動と精神状態をたどるか、という主としてケアする側からの本と、⓶人はいつか死ぬもの、そのために常日頃どのような心構えでいればよいか、といった二種類の本が出回っていることだ。前者は押しなべて外国の文献が多く、それも終末医療に関係する著者が多い。これに対して後者は日本人の著作が多く、著者は宗教関係や文化人が多いようだ。

画像
         立花隆『死はこわくない』文芸春秋
       終末医療現場の最新医療を取材、また臨死
       体験と脳との関わりを研究する欧米の最新
       状況を取材している。

 例えば、書店で思わず衝動買いしてしまった『死はこわくない』だ。著者が立花隆なので安心して買ったのだが、期待は見事外れた。そもそも私は前述した⓵は興味がないのだが、この本は⓵に関する欧米の最新研究の調査報告だった。早い話が、終末医療を西洋文化が得意とする科学的方法で解決しようとするアプローチなのだ。考えてみれば日本医療界の現状は、この考えに、これまた西洋文化の得意技である商業主義が入り込み医療費が激増し大混乱に陥っている。そういうことを、この高名な評論家は知らないのかと腹が立ってきたが、読み進めて彼の経歴を知り納得した。そこには、次のように書かれていた。
 
 僕の両親はキリスト教徒だったので、一般の日本人の習俗を知らずに育ちました。今でも困ることがありますよ。お盆ってなに?と聞かれても答えようがない。当然、家に仏壇もないし、神棚もありませんでした、むしろ両親はそういう日本の伝統的な習俗に反対していました。(『死はこわくない』、28頁)

 こりゃ駄目だ、彼は日本人じゃない!
 日本人は崇高なる「死」を「生命を長らえる」ことや「死の受容を患者の混乱する精神状態をステップ分けして対症する」という側面からだけでは捉えない。むしろその逆で生と死を表裏一体のものと捉え、日頃の精神の持ち方で「死」を迎えるという発想を優先する。武士道などは代表的な日本の死生観である。しかし現代は戦国時代ではない、時代に合った死生観がある筈だ。そのようなことを考えているとき、忽然と思い出したのがSさんの便りだった。

<つづく>

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この記事へのコメント

予言書
2019年05月08日 02:16
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